7つ真珠の首飾り
そこには、べろべろしたワカメの中には、白っぽい光がぎゅっと凝縮されて詰まっていた。

7つ。

少し濁った白。乳白色というのが正確な説明かもしれない。

まん丸い、玉が7つ、ごろりごろりと。
信じられないほどの大きさの、それは確かに真珠だった。


「何なん、これ……!?」

「真珠だよ。7つ真珠の首飾り。シズ、触っちゃだめだよ」


伸ばしかけていた手を引込める。
魚を盗り損ねた猫みたいで、ちょっと決まりが悪かった。


「どうして?」

「生あるものが触れてはいけないんだ。これは最後の一粒だから」


ティートは真珠を海藻ごしに撫でた。
最後の一粒。よく見てみるとその光の凝縮しているのは、真ん中の一粒だけで、乳白色がうつくしいのもその一粒だけだった。
あとのはみんな、少しずつ度の違う黒ずみ方をしている。


「これは、シェルライン家の家宝でね。
とてもうつくしい真珠だろう。だけどこれは、本当に恐ろしいものなんだ。


この7つ真珠の一粒一粒には、力があると言われている。
触れたものの願いを聞き届ける力がね。

だけどそう話はうまくない。
こいつが叶えてくれるのは、物理的なものだけだということなんだ」

「物理的?」

「ひとの感情は動かせないとか、そういうことだよ。
そして今僕にとって重要なのはそこだけなんだ。


占い師の話をしたね。
そのお告げが、これを使う以外に方法はないということだったんだ。

無論、臣下たちはこれを求め始めた。

この真珠はある種の伝説として僕の国に存在していたんだ。
家宝と知るのはシェルライン家の者だけだった。
そしてその恐ろしさを信じ、畏れ、敬っているのも。


この真珠はね、願いを叶えてくれる代わりに代償をもらっていくのだそうだよ。

7つ目の願いを聞き入れる時。

願をかけた生き物の命をひとつ、奪ってしまうんだって」
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