-Judge-
辛苦の上で


久しぶりに夜空を見上げたら満月だった。
こんな日は余計に、両親を亡くした時の記憶を蘇らせる。
それは身体中を熱くさせるには充分で、じわりと焦げるような激情に、その時だけ目が鋭く細まるのが自分でも分かる。

どうすれば良い。
この憎いという思いを消し去る為に、何をすれば良い。

そう考えたら止まらない。

復讐を果たすという考えでいっぱいになった脳は身体のあちこちに指令を送る。そのせいで小刻みに震える手をぎゅっと握り締めて歯を食いしばる。
冷静を取り戻す為に瞳を閉じて、込み上げてきそうになる涙をぐっと堪える。

後少しで見つかる。
犯人の手掛かりはついていて、此処まで辿り着くのに五年間を費やした。実際は訓練に追われて、空いてる時間を見つけて捜さなければいけなかったのだからこんなに時間が掛かってしまった訳なのだが。
それでもなかなか犯人達を見つけ出せなかったのは事実で、あの両親を殺した男達の後ろには、何か大きな組織が関わっているんじゃないかと思う。

それ程だった。全ての情報は揉み消されているかのように、何かに守られているかのように。



< 29 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop