-Judge-

「ふ、ざけるな…」

声が震えた。


「ふざけてなんかいないさ。お前は美月(ミツキ)に似て、とても美しい。」

ボスが口にしたその名前に、こくりと息を飲み込んだ。
美月。それは、母の名前だった。

「私が愛した美月には夫がいた。子供もいた。嫉妬で気が狂うんじゃないかと思ったよ。けれど、幼いお前を見た瞬間に世界は変わった。美月の化身だと思う程に、私は胸焦がれた。」

「…」

「お前を手に入れるために両親を殺した。そうしたらお前は私のものになった。そうだろう?」


当たり前の様にそう言ってのける彼に、何を言えば良いのだろう。


だって、私を愛している?


「お前に近付くゼンも死んで、胸がとてもすっきりしているよ。」


思わずごとりと落とした銃を、横にいた刀夜が拾い上げる。

震えた唇を片手で覆い、驚愕で見開いた目を、目の前の男に向けた。


「…狂ってる。」

「何がだ?愛しているもののために手段を選ばないことの何が狂っているんだ?」


一歩後退る私の腕を掴む男に鳥肌が立った。





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