ラブトラップ
7.
翌日――。
私は、クレープというよりは、むしろケーキと言ったほうが相応しいような代物を二つも目の前にして、空っぽの財布と心を抱えて、クレープ屋の中にいた。

「ほら、半分分けてあげるから、元気だしなよ」

南は優しく言って、確かにそれを取り分けてくれたけど――。元は私のお金だよね、これ。

「本当。
 南ちゃんが言うように、感情豊かだね、リンちゃんは」

南の隣で、ぱくぱくと大きなクレープを頬張りながら、遠慮もなくそういう斉藤くん。

別にいいけどさぁ――。

「だって。
 どう考えても、不審人物になってる気がするもん、最近の私」
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