ラブトラップ
「いや、稲葉はそこまで度量が狭いヤツじゃないと思う」

斉藤くんの言葉は心強いけれど――。
でも――。

「いやいや。
 美虎は度量狭いでしょ?」

そこだけは譲れない。

「そんなことないって。
 誰にだって平等に優しく接する良い奴だって」

「嘘だもんっ。
 何かっつったら、絡んでくるし。
 すぐに人の揚げ足取るし。
 私のこと言い負かすたびに、楽しそうに冷笑するし――」

も、もしかしたら。
稲葉美虎っていう、同姓同名の奴の話だったのかもしれない。

だって、「誰にでも平等に優しく接する」ような男、私は知らない。
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