ラブトラップ
2.
桜恋高校に入学して、初めての文化祭。
私たちは二バンド目だ。

現在、一バンド目の演奏中。
お世辞にも上手いとはいえない演奏。
客席からの拍手もまばらだ――。

体育館のステージ袖でスタンバイしている私は、この冷たい反応に思わずごくりと唾を呑む。
肝心の手も、すごく冷えていてそれでなくても失敗しがちなのにちゃんと動くか心配になる。


他のメンバーは、そんなこと気にする風も無く楽しそうに談笑しているんだもん。


いいなぁ――。


私が四人を見てため息をついたのを、美虎は見逃さなかった。


そうそう。他のメンバーが下の名前で呼び合うのにつられて、私も皆を下の名前で呼ぶようになって、もう随分と日にちが経っている。
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