ラブトラップ
美虎は皆の中から抜けて、私の傍に来た。
にやりと歪む唇の端に何か悪い予感を感じたが、もう遅い。

「大丈夫だって、キリン。
 練習でも一度も完璧に弾けなかったんだから、本番も力むこと無いだろ?」

――さ、サイテー。
  美虎の口の悪さは相変わらずだ。むしろ、日が経つにつれどんどん酷くなっているようにも思える。


「美虎、初の本番を前に緊張しているメンバーに、よくもそんなこと言えるわね」

私は小声でそう言い返す。
< 8 / 90 >

この作品をシェア

pagetop