ヘタレ男子の恋愛事情
図書館へ向かう僕の足取りは複雑だった。

彼女に会える。

それを思うと、嬉しいのに。


締め切りが待っている。

それを考えると、立ち止まってため息なんかつきたくなる。


ガラスのドア越しに、カウンターに座る彼女の横顔が見えた。

今日は返却のカウンターだ。


それだけでまた気持ちが下がる。

貸出のカウンターなら、借りたときにしゃべりかけることもできただろうに。

や、別に普通に話しかければいいんだろうけど、
それっくらいなんともないことなんだろうけど、

…僕ってほんと意気地なしだ。

理由がなきゃ、話すことも出来ないなんて。


隣に座っていれば、彼女が何か話題を振ってくれて、
僕が答えて、彼女にも聞いて、
僕がやっと思い付いたことを言って、
彼女が答えて、そこから発展したり、変化していく。
そうやって成り立っていた会話は、

つまりは横にいないとありえないものなわけで。


今日は隣に座るんじゃなくて、
ただ本を借りて、
家に帰ってイラストを描く。

そう思うと、なんだか、

僕の存在ってのが希薄に思えて、


目の前にあったガラスドアが曇るくらい、

盛大なため息を、


ついてしまった。
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