Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
「ねえ、こんなにいっぱい何持ってきたの?」
小林さんが尋ねた。
「手作りのクッキーとフルーツカクテルが主任さんに、僕の好きなピーターパンの絵本の洋書がお嬢さんの、この赤いリボンしたのがそう、可愛いいでしょう。ご主人には洋酒、この青いリボンのだよ。あとこれはね・・・」
じゃーんと言って開けた箱からは、へんてこな男女の人形が出てきた。
「僕、紙粘土で作ったんだ。主任さんご夫妻だよ。旦那さんの顔知らないから、管理人さんの家で宮根せいじの番組を見せてもらって作ったの。寝室に飾ってくれたら嬉しいな」
みんなは唖然としていた。
ただ一人樋口さんが
「ふぁんた君て、わたしと趣味合うみたい」
と喜んだ。
少しして、会社の近くの花屋さんがやってきた。
「あ、それ僕です」
ふぁんたは花束を受け取ると、さらさらとサインをした。
「ねえさんの話だと主任さんは40歳でしょう。僕、バラを40本買ったんだけどどうかな」
小林さんがお茶目に言った。
「ふぁんた君。次はうちのパーティに来て。ちなみにわたしは今年百歳になるのよ」