Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
約束の時間になり、いやいやながら着替えたわたしを満足そうにふぁんたはエスコートして丸山主任の待つ車に向かった。
バラの花束をもらった主任は、少女のようにはしゃいだ。
自家用車で迎えに来ていた主任のご主人が、ふぁんたに握手を求めた。
「すみませんねえ、こいつが無理を言って」
宮根せいじにちっとも似ていないご主人は、あっさりと主任の嘘をばらしてしまった。
「やっぱりねぇ、ご主人がパーティなんておかしいと思ったのよ」
「丸山主任ミーハーだもんね」
「あらやだっ、主人たら見栄張っちゃって」
あたふたと主任が自己弁護した。
「何だ君は、また僕にかこつけたのか!」
ご主人が呆れ顔で言った。
「今日はお招きありがとうございます。僕とっても楽しみにしていました。奥様は僕がオーケイしやすい誘い方をして下さったのです」
ふぁんたが割って入って、主任のフォローをした。
ご主人が苦笑いをして、わたしたちを車に乗るよう促した。
ふぁんたは主任のために助手席のドアを開け、わたしのために後部ドアに手をかけた。
「頭に気をつけて。ドレスの裾は僕に任せて」
ふぁんたはドアを閉めると、反対側にまわってみんなにじゃあねと言い、車に乗り込んだ。