【短編】君に捧げる『物語』
「おっ、見ろよ。また作家が賞取ってんぞ」
廊下に張られているでっかい紙切れ。
そこに群がる他クラスの誰かたち。
「次は総理大臣特別賞!?すっげ、一体どんな脳みそしてんだろうな、作家」
「なぁ、その『作家』って一体誰なんだ?」
僕は彼等の輪の中にすっと入り込み、質問してみる。
「は!?お前知らねえの!?あのなぁ、作家ってのは、2組にいる塚本由愛(ユアイ)の事だよ。天才現役女子高生絵本作家。だから『作家』」
「つっても、お前知らないとかどんだけだよ!」
「…ごめん!だった、忘れてたわ。つか僕よく考えたら同じクラスだったし」
ごめんごめんと軽く会釈をして、もといたグループの方へと戻る。
そして、その仲間たちを通り過ぎ、そのまま反対方向へと歩を進めた。
「おい赤木!どこ行くんだ?」
「んー気が変わった。今日は屋上で飯食うわ」