時雨の奏でるレクイエム
ぼんやりと二人のやりとりを聞いていたらとんでもない言葉が出てきた。

「一目惚れ……って」

「別におかしなことはないだろう。幻獣は人に慈愛の気持ちを持ってるものだし、幻獣と
人間は、似たような感情を持ってるんだ」

「そ、そう……なの、かなぁ」

なんだかとても釈然としない。

「その結果産まれる子が幻魔の民だろ。今はフラクタルチャイルドだったか」

「あ。そういえば」

アルミナを筆頭にした黒髪の少数民族のことを思い出す。
そして、そこで出会った幻獣のことも。

「そうだ。幻獣界にいく準備が全部整ったんだね」

『あー。もしかして、ボクまだ解放されない?』

何かを察したらしい猫が口を挟んだ。

「あたりまえだ。入り口まで案内するという役目が残ってる。その後は兄様に目をつけられない程度にオリビンと仲良くしてればいい」

ラディウスはそう言って猫を取り巻く魔力を変換した。
猫は子猫ほどの大きさになり、こうもりのような羽を生やした。
ラディウスは肩に猫を乗せると、頼んだぞ、と言って猫の喉を撫でた。
猫は機嫌が良くなってごろごろと喉を鳴らした。
うーん。
小さい猫可愛いな。
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