時雨の奏でるレクイエム
「……あ」

知らぬ間に眠ってしまったらしい。
懐かしい夢を見た。
といっても、せいぜい一年前のことだ。

「ああ、誓うさ……。俺は、この世界に、この幻獣に復讐することを」

「復讐?」

「……っ!!」

ラディウスのすぐ横に緋色の少女がいた。
改めて周りを見渡すとそこは結界の家だった。
どうしてこんなところで寝てしまったのか(しかも少女のすぐ横で!)、まったく憶えていない。

「ねえ」

少女はラディウスの腕を掴み、微笑んだ。
惹かれる力が、少女の手を払うことを拒んだ。

「幻獣王を、探しに行こう?」


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