ローレライ



「あたしんとこさあ、小学生の頃母親が他に男つくって離婚して、あたし父親と暮らしてたんだけど、最近父親死んじゃって。そんで今、母親とその男と暮らしてんの。もう気まずいのなんのって!だから飛び出して、こんなとこまで来たんだ」



彼は煙草をくわえて、黙々と聞いてくれていた。



「だから、プレゼントなんだと思う。ゼンの歌を聞いて、もっかいあの家で頑張ろうって思った」




ゼンは、頭を撫でてくれた。そんな手がやっぱり優しくて、無性にまた泣きたくなった。




「…ッヒク…ごめ、出会ったばかりなのに、こんな…ぅ…」




あたしは膝を抱えて泣いた。ずっとあたしは不安定だったんだ。我慢してた。こんなにたくさん泣いたの、いつぶりだっけ?





「…プレゼントとか、あたしもきざ?」




顔を上げて、まだ涙が滲むけど、彼の顔を見ると「ふふっ」て笑った顔をしてた。






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