教室バロック





「 ――― ここ、東向きの部屋だから

朝になると
部屋中ピンクに染まるでしょうね 」





看護士さんが

見上げる那智や、比奈や、山瀬

花さんの後ろから、そう言って優しく笑う




「 …うっしゃ


オレ手、洗って来るわ

あ、 もう面会時間終わりか 」


「  あ 」


「 あ、 そっか… 」



「 大丈夫ですよ 少しくらい 」



看護士さんがイタズラっぼく笑って

部屋の端に寄せてあった
手付かずのケーキの乗ったカートを
カラカラと部屋の中央に運んで来てくれた




「 時期はちょっと違うけど

―― お花見っぽいね これ 」



花さんが胸の前で、腕を組む





「 うん!

…あの、ナースセンターにも
看護士さん、何人かいますか? 」


比奈が皿の上に
まだ大量に残っているケーキを出して
看護士さんの前に差し出す



「 ええ どうして? 」


「 ワイロだろ 比奈村 」


那智がニヤッと笑って
比奈の顔を見る



「 人聞き悪いなあ!
お礼だよ お・れ・い!


時間延長許してくれてるんだし〜 」


「 …食べれば消えちゃうし? 」


花さんまでそんな事を言って
看護士さんに、ケーキを勧める


皆 笑って

「 ありがとう 」と
看護士さんがウエートレスさんみたいに
腕の上に皿を置こうとした時


ベットの上を見たまま、動きが止まる







< 209 / 287 >

この作品をシェア

pagetop