教室バロック





躍り込んで来たのは、鴨のままの那智

教室の外へオレの腕を引っ張り
ただそのまま足早に歩き、止まった


「 … どうしたんだ?! 」



何事かと、後を追って来た山瀬も
赤い唇と細い眉を怪訝そうに歪めて、

浅葱の羽織りを着た"土方"妹尾が
少し後ろに立つ



「 …空哉、
佐野とかあの辺、覚えてるか?! 」


「 あ、ああ、
RARARA金髪、せつない失恋ソングの… 」


「 今は働き始めて、金髪じゃねえんだよ
見に来てたんだけど、

なんか来る時、駅前で
両親ぽい人達と一緒にいる
伊藤の事見かけたって… 」




「 … なんで佐野が伊藤の顔…
退院したのか?! 」



「 …なのかな…

俺達が見舞いに行った時
最後、結構喋ってたし
あれから一ヶ月近く経つしさ


顔知ってる事に関しては
付き合ってた時、伊藤を
あの時みたいに、
カラオケ連れてった事あるから…


――― あ、 花さん!!

花さんがいる! 聞いてみよう!! 」




「 那智くん! 空哉くん! 」



オレ達に気が付いた花さんが
携帯電話をにぎりしめ
太いマユゲのまま、
廊下の端から走って来た







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