教室バロック





原稿の締め切りで
あまり寝ていないという湯浅を引き留め
一晩、泊まって行く事になった



一昨日、新たにつけたばかりの
付けては学校に行っている間に
外される鍵

ロックとチェーンを、ガッチリ閉める




枕元のライトをつけて
同人誌を、もう一度開く



――― 男の描いたマンガなのに
本番シーンに、激しい描写はなく、
お互いを気遣うヒロイン同士が
花柄の点描トーンで飾られている




寝しなに

『 … マンガの中でくらい
平和で、優しい世界だっていいよね 』と
下に敷いたフトンの中で、湯浅が言った


オレもそれに、うん と返事をして本を閉じ
久しぶりに、部屋の明かりを消す



一度

――― 親父と、複数の人間の声
車のドアが閉まる音と
それが遠ざかって行く音

しばらくして、部屋の前に
気配を感じた


何回か、ノブをまわして
階下に降りて行く音




親父のアニキがいる間はいいが
帰った後が一番ヤバイ



…あの人、世間体を気にするし
ここは家、そして友達がいるから

今日はもう、
ぐっすり眠って平気だ ―――







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