教室バロック





昇降口


下駄箱の前で
ぽつんと独り、立ちすくむ伊藤がいた



体に対して、かなりデカいバック

それの肩ヒモ部分をブラリと持って
本体はペタンコのまま
床に倒れ、横倒しになってる



…少し空気が変で
通り過ぎるフリをしながら
後ろを通った


フタ付きの下駄箱は、開いていて
納まっているはずの靴の影は無い


中には
グシャグシャになったプリントやら
パンの食べカスやら、カップ麺の容器


あからさまなイジメの現場に立ち会って
つい、足が止まってしまった



―― 伊藤はチッと舌打ちし
ガサガサと勢いよく、全て床に落とす


奥まで覗いても、やはり靴はない






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