gently〜時間をおいかけて〜
「はい、完了」

気がついた時には、赤外線で交換した後だった。

同時に、チャイムが鳴った。

「じゃ、また後で」

三島くんはスマートフォンをしまうと、カバンからペンケースとルーズリーフを取り出した。

つられるように、あたしもスマートフォンをしまうとカバンからペンケースとルーズリーフを取り出した。

どうしよう…。

あたしは信じられない事実に、戸惑うばかりだった。

声をかけられて、まさかのアドレス交換である。

しかも、あたしの夫になる人からだ。

航が知ったら、どうしようと言うのだろう。

ズキズキと痛み出す胸に、あたしはどうすることもできなかった。
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