gently〜時間をおいかけて〜
「えっ?」

航が押したとたん、あたしは目を疑った。

窓の外に視線を向けると、校門から出ようとしている生徒たちがいた。

道路のうえを走っていたトラック。

おじさんがナポリタンを食べようと、フォークをあげている。

店員が淹れたばかりのコーヒーをカップに注いでいた。

ウエイトレスが客のコップに水を入れていた。

ウソでしょ…?

みんな、止まってるの…?

止まってる中で動いてるのは、
「俺たちだけだよ」

見透かしたのか、航が言った。

「この携帯電話には、時間を止める機能がついてるんだ。

時間を止めるだけじゃない。

巻き戻したり、早送りしたりもできる機能もついてる」

得意そうに笑いながら言った航に、あたしは信じるしか選択がなかった。
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