gently〜時間をおいかけて〜
父親は息を吐くと、
「調べたら、母さんが離婚を考えていることがわかった。

毎月振り込んでいたその金は、そのためだっただろうと思った。

つらい思いをさせたから、離婚されるのも当然だと思った。

せめてもの償い…と言うのは大げさかも知れないが、母さんから離婚を言い渡されるのを待っていたんだ。

それを承諾して、後は母さんの好きなように生きさせようと思っていた」

そこまで父親が考えていたことに、俺は驚いた。

信じられない事実に、俺は戸惑うことしかできなかった。

「もう母さんには、俺のせいでつらい思いをしないで欲しい。

母さんの好きなように生きて欲しい。

趣味を見つけてそれに取り組むなり、別の男と再婚して幸せになるなり…それはみんな、母さんの自由だ」

父親が言った。
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