gently〜時間をおいかけて〜
あたしも航も、お互いが初めてである。

当然、痛かった。

でも大事なものに触れるように航が抱いてくれるから、とうとうこらえることができなくて涙がこぼれ落ちた。

「――莢…」

航はあたしの頬に向かって手を伸ばすと、指で涙をぬぐった。

それが余計に切ないように思えて、また余計にあたしの目から涙がこぼれ落ちた。

「――航…」

今の時間は、あたしたちの関係は親子じゃない。

愛しあって、抱きあっている男女の関係だ。

ずっと、このままでいたい。

愛しあう男女のままでいたい。

あたしたちは、同じことを願っている。
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