gently〜時間をおいかけて〜
今日は、猛烈に寒い。

立っているだけでも、氷になってしまいそうだ。

こんな俺を、周りからはどんな風に思われているのだろう?

主人の帰りを待つ忠犬?

それとも、彼女に追い出されたかわいそうな彼氏だろうか?

「どこで何をしてるんだか」

コートのポケットから携帯電話を取り出すと、着信の確認をした。

当然、なしだった。

息を吐くと、携帯電話をしまった。

「――あっ…」

その声に、俺は視線を向けた。

「――莢…」

彼女が、俺の目の前にいた。
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