gently〜時間をおいかけて〜

gently8.5〜航目線〜

断った方が、よかったかも知れない。

――今すぐ、抱いて…

涙目で、彼女はそう訴えてきた。

訴えてきた彼女を俺は断らなかった。

好き過ぎて、今にも思いがあふれ出しそうだったからだ。


「――留守か…」

久しぶりにきた莢の家は、留守だった。

そりゃ、そうか。

今日は12月24日である。

世間はクリスマスイブで浮かれている。

そんな日に、どこかへ出かけることくらいあるかも知れない。

「――寒いな…」

俺は呟くと、ドアにもたれかかった。
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