gently〜時間をおいかけて〜
そろそろ、本題に入ることにしようと思った。

「あたしの夫になる人で、航の父親の名前が誰だかわかるの?」

あたしは聞いた。

本当を言うと、あまり知りたくなかった。

航も父親の名前を言いたくないと思う。

結婚したのに夫婦仲は冷え切って、航に寂しい思いをさせたからだ。

ほら、航だって言いたくなさそうな顔をしてる。

「――三島」

航が呟いた。

「えっ?」

そう聞き返したあたしに、
「三島祐樹(ミシマユウキ)」

航が答えた。

その名前に、あたしは聞き覚えがあった。

航が言った“三島”ってまさか…あの、三島くんなの?
< 21 / 202 >

この作品をシェア

pagetop