gently〜時間をおいかけて〜
「ねえ、その三島くんって…?」

そう聞いたあたしに、
「そうだよ、莢の大学の同級生だよ」

航が答えた。

「その人があたしの夫になる人で、航の父親なの?」

あたしの質問に、航はそうだと言うように首を縦に振った。

やっぱり、そうらしい。

「現にそうだよ。

莢とその人が、俺の両親なんだ」

「でもあたし、三島くんのことを知らないよ?

そりゃ、何度か講義で顔をあわせたことはあるよ。

でも話したことなんて、1度もないから…。

そもそも彼、無口で近寄りがたい人だから…」

あたしの唇から吐き出されるその言葉は、言い訳にしか聞こえなかった。

航は、いつの間にか夜になった空を見つめていた。
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