gently〜時間をおいかけて〜
まだ涙の跡が残る頬に、そっと触れた。

弾力のある白い頬。

キレイに手入れされた髪。

血液の通った肌。

ホッと、俺は胸をなで下ろした。

まだ若々しい莢の姿に、安心する。

ずっと、このままだったらいいのに。

父親と結婚しないで、俺を産まなければいいのに。

そうしたら、莢の姿はこのままだ。

ずーっと美しい莢のままである。

悩み苦しんでる莢の姿なんて、見たくない。

美しいままの、幸せな莢のままでいて欲しい。

莢の寝顔を見ながら、俺は願っていた。
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