ひざまくらの後は?
あ…….。


掌に爪が食い込んでいくつか赤い血が滲んだ自分の手を見る。

こんなになっていたなんて……、気付かなかったです。

自分の両手をまじまじと眺めていると、

運転席からティッシュが数枚伸びてきて両掌に握らされた。



「お前のそのすぐ諦めて何でも譲ろうとする癖はあの姉が原因か」


智くんは少し悲しそうに眉を潜めて私を見ていた。

「ちが……」

否定しようとした言葉を言い終わる前に、突然頭の後ろに回った智くんの左手に引き寄せられて顔が近づき同時に唇も重なっていた。


「いい。言い訳なら帰ってから聞いてやる」


短いキスのあと運転席から身を乗り出した智くんは私の頭を胸に引き入れて、強く抱きとめられた。

……智くんの匂い。
大好きなこの匂いを胸いっぱいに吸い込む。

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