私は、みた。
その日は、ランも登校してこなくて、四時限が終わると、まりなと愛と三人で机を合わせて、お弁当を食べ出した。

まだ南とランが来ないのを気にしつつもお弁当を開けたとき、後ろのドアが乱暴に
開き、南が険しい顔をして教室に入ってきたのが見えた。まりなと愛はドアを背にして座っていたので、すぐには見えなかったらしい。私は手をあげて、南をよんだ。

「あ、南!こっち、こっち!」

すると、私の声に反応した愛が、驚いたことに、飛び上がって私の手を掴んだのだ。まりなは急いで口の中の食べ物を飲み込んだ。

「何してんの、カナ!」

二人の反応がよく分からない私は、とりあえず手を下ろした。当の南は、不思議なことに、私の方を一瞬だけちらっと見ると、ぷいっとよそを向いて自分の席にすわってしまった。

「え、何、どうしたの?」

愛が怖い顔をして乗り出してきたので、話が嫌な方向に向かってるのを分かってながらも、私も思わず身を低くした。

「南と話しちゃダメだよ。」
「え、まって、え、なんで?」

そのとき、少し離れた所にいた南の声が聞こえてきた。電話で誰かと話しているらしくて、すごく大きな声で話してる。話の内容が聞こえてきたとき、まりなと愛が体を硬くしたのが分かった。

「もしもし~?伸助さ~ん?暇ですけど~。」

相手の名前が聞こえた瞬間、私ははっとした。南がものすごく甘い声で呼んでる名前は、なんとランの社会人の彼氏の名前なのだ。少し話が見えてきた。決していいことではない。

「えぇ~?あたしですかぁ~?今学校ですぅ!伸助さんは~?」

甘ったるい声にだんだんイライラしてくるが、それよりも心配と不安のほうが大きい。もしかしてランが学校にきてないことと関係してるのかな。出来ればそうじゃないといいんだけど... そんな私の願いを虚しく、彼女の甲高い声が聞こえてくる。

「きゃはは~!!伸助さんったら、えっちなんだからぁ~。えぇえ?それ、ランが可哀相じゃないですかぁ~?」





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