俺様狼と子猫少女の秘密の時間①

立夏が亡くなって…他に心の支えもなにも持っていなかった俺は、最初の一年、壊れそうだった。

その後、辛うじて支えだった母親が病死し……完全にすべてを失った。


毎年二人の命日になるたびに、心の中で泣く自分に気付く。

自分でも驚くほどに脆く、今にも折れそうな心に気付く。


そして気付くたびに……俺のすべてが揺らぐ。



だが今年は違う。

なぜなのか……それは本当は分かっている。


…俺には今、心の支えというものがある。

思い出すだけで穏やかになれるような、そんな大切な存在が。



「…悠由……」



小さく呟き、空を仰いだ。



……会いてぇな…。

悠由……。



一度固く目を閉じて、再び足を進めた。


立夏とよく通った場所…。

次々と壊されていく空き地の中、幸いにも未だ残っている貴重な所だ。

今年もまだ…あるか?


コートのポケットに両手を突っ込み、俯き加減にゆっくり歩いた。


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