闇夜に浮かぶ紅い月
『こ、こわい』

『……そうか』

『あ、や、やっぱり怖くないっ!』

『……どっちなんだよ』


怖いと言ったら、いけない気がした。

だけど、彼の目に逆らえない何かを感じ取った私は素直に答えた後、嘘をついたのだ。


『あ、わわ、わからない……です』


私は俯いて、次にやってくるレオの言葉にヒヤヒヤしながら待っていた。


『はっ』


やってきたのは想像していたものとは全然違っていて、息を吐いたような声が聞こえたと思い顔を上げると、そこには綺麗に笑うレオの姿があった。


『あ……』


思わずレオに指差す私。

それで自分が笑っていることに気づいたのか、レオは咄嗟に口を隠す。


『今、笑っ』
『気のせいだ』


私の指摘を受け入れたくないのか、レオはすぐさま遮る。

照れを必死に隠そうとする彼に、自然と笑顔になる自分がいた。


この時すでに、私の中からレオへの恐怖は無くなっていた。

結局、ヴァンパイアであっても彼は彼なのだと理解した瞬間だった。












そう、結局はつもりでしかなかったのだ。



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