Snow Princess ~雪の華~
リリアは若干うろたえていた。

先ほど同僚たちから悲惨な有様を聞いた後でこんな素直なマリンを目の当たりにすれば、誰でも戸惑うであろう。

それほどまでに、今のマリンは異常。

それを伝えると、マリンはああ…といって頭に飾り付けられている薔薇に触れた。

「きっとこれのおかげよ」

「薔薇の?」

ええ、とマリンは頷いた。

「私の生みのお母様と同じ名を持つ花、私の一番大好きな花なの。
これのおかげで、勇気を持つことができるの。…お母様は遠くへ行ってしまったけれど、ね」

マリンの表情が翳(かげ)った。
思い出されるのは何も出来なかった幼き己の無力感。


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