Snow Princess ~雪の華~

マリンは目に涙をいっぱい溜めてシーモアに激しく訴えた。


「何よりも強く美しく! それに……パーティはもうすぐだわ。それまでにっ───」


そこから先は嗚咽に飲まれ、言葉にならなかった。
シーモアは息を呑み、黙ってマリンを見つめていた。


「人づてに聞いた話だけで長い夜のパーティを乗り切れるとでも? 私はそんなこと出来るほど出来た人間じゃないわ」


誰か貴族に聞きに行けば、それは自らの弱点をさらしているのと同義。

たとえ近しく親しい者でもマリンの評判を落とすチャンスを見逃すはずがない。


それはあながち間違いでもなかった。

隣の帝国が大きな力を持っており、たいした国ではないが豊かで穏やかなこの国は常々狙われている。

他国の一番の狙いは特産は国の石にもなっているオパール。
純度も値打ちも近隣に比べ一ケタ高い。

国の言い伝えでは魔力を秘めているともされる守り石。


その鉱脈はまだまだ眠っていることがわかっており、それを他国が放っておくわけがない。



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