狂暴わんこのひとり占め。




部屋の片付けも、大体は終わったものの 食器とか細かい所はまだ手をつけてないのに。

こんな予想外の訪問者が来てしまっては、片付ける気も失せる。


まあ、そんなことも言ってられないんだけど。

渋々 私はキッチンに置いてあるダンボールに手をつけた。


「紗希って引っ越してきたばっかり?」


呑気な犬は、何故かソファで体育座りをして訊いた。

キョロキョロと部屋を見渡している。


「そうよ。あんたが来なかったら平和な一人暮らしだったんだけど」


「いーじゃん、楽しいでしょ?」


「迷惑でしかないわ」


あっさりと答えてやると、何が可笑しいのか灯夜はクスクス笑っていた。


男に飢えてるわけでも無し。

こんな犬を拾ってやる義理なんてないのよ、私には。


もっとも余裕そうな態度に苛立ちを覚えるだけだ。



「あんたを家に置いておいて、私にプラスな事があるの?」


むしろマイナスよね?


てきぱきと戸棚に食器を片付けながら、自分なりに講義する。

内心ムリだとも思ってるんだけど。



「あるよ?紗希にとってプラスな事」


「え?…なに?」


「んー、言うより行動にした方が分かりやすいかな」


「行動?」



なんか嫌な予感がする。


相変わらず灯夜は笑ったままだし。



まさか "俺とヤれる事"…とか言うんじゃないわよね…?



「じゃあさ、散歩いこ!散歩!」


「さ、散歩ぉ?」


「うん。俺は紗希の犬だから、散歩」


なんかそれは 理由がめちゃめちゃではないですか?




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