狂暴わんこのひとり占め。
目をそらして、小さくため息をつく。
「……悪いと思ってんなら、出てってよ」
「ヤだ」
即答かよ。
「だって、どうせいつかはここも出てくんでしょう?」
アンタにしたら ただの宿でしかないんだから。
「紗希はそう思ってんの?」
「当たり前」
「だから怒ってる?」
「………そんな訳」
言葉が出なかった。
…モヤモヤの正体が分かったから。
「………俺はずっと紗希のそばにいるよ?」
「それ一人一人に言ってんでしょ。 私には効かないよ」
ひねくれてるな、私。
冷静すぎて呆れる。
「俺 今、真剣に言ってんの分かんない?」
いつの間にか、奴に手首を掴まれていた。
確かにふざけてはなさそうだけどさ。
あんたには前科ってものがあるでしょ。
「真剣でも信じれない。 あんたは女専門の詐欺師じゃん」
「つくづく毒舌だよね」
「だから私は灯夜を好きになんかならない」
口を開くにつれ、壁へと追い込まれる。
今日、二度目。
私はそんなので動じてなんかやらないけど。