この涙が枯れるまで


『あれ?沙紀、ナナは?』

『あ~何か風あたりにいくって言って外出てったよ?』

『こんな時間に?』



時計を見てみると、もう夜の9時を回っていた。



ナナが心配でたまらない。


『俺、ナナ探してくる。悪いな』

『いいよ~』

『行ってこい!』

こう沙紀と歩に言われて、僕は部屋を後にする。


ナナはどこにいるのだろう。


僕は無意識のうちに、海に行っていた。


真っ暗で何も見えない。

ここにはいないのかな。

と思っていた。

でもナナはいたんだ。

浜辺にちょこんと座って、海を見ていた。



『ナナ?』


『あっ優…』


『どうした?考えた事?』


『ん…疲れたから、風にあたりたくて』


『無理すんなとは言いたいけど、冷えるよ?』



―ザーン…


波の音が聞こえる。

潮風もあたる。

ナナは何を考えてるのだろう。

こんなところで、

しかも一人で。


僕は歩が言っていた言葉が蘇る。


《ナナは心を開いていない》



『ナナはさ…』


『何?』


『俺達に心…開けてる?』

『え?』


『何か、ナナは一人で考え事してる時が多いし、友達作らないし、俺達としゃべってる時とか何か違うっつーかさ…』


『………そうだと思う?』

『うん』


ナナ…この時の僕は無神経すぎたね。


でもナナの心を開けれた気がするよ。





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