この涙が枯れるまで
『おはよう!』


『おはよ。瞳、偉いね。』



『うん、優君と違ってね』



『うるさいから』


この二人のやりとりを横目で見ていた人がいたんだ。


あの人。

バス停で百合と話していた人。


滝川先輩。


僕はまだ滝川先輩の存在を気付かなかったんだ。





瞳と話し終えて僕は、教室に戻った。


まだ人がいない。

百合も歩も沙紀も。

だってまだ20分前。

まぁ待っていよう。

10分ほど経ってから、歩と沙紀が教室に入ってきた。

『優?早くね?』



『めずらしいだろ?』



『うん。』



『はっきり言うなよ』



『嘘~!つか昨日どうだった?』


歩は自分の席にカバンを置き、
僕の方を振り返った。



『謝ったよ!許してくれた』



『良かったな』


『良かったね』

沙紀が横から笑顔で言ってきた。



僕は沙紀を見下ろし、お礼を言った。


『つか沙紀もありがとな。』



『えっ?あ~あれ?いいよ』



『何だよ!!怪しい~』



『俺と沙紀の秘密だし』

『そうだぁ!』

『優!!!てめぇー!!』



『冗談だって』

教室に僕たちの笑いが広がる。



そんな時、百合が元気良くやってきた。

『おっはぁ』



『おーす!』



『百合、おはよ』



『…おはよ』



緊張してまともに顔が見れない。



『優くんおはよ!』



『おはよ…』


…今、百合が僕に優くんって言った?



初めて言われた。


百合に優くんって。


今日はいい日になりそうだ。





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