この涙が枯れるまで

駅に着いたのは9時50分。
どうにか間に合った。

百合はまだ来ていない。

暑いけど百合のため待った。


でも10時過ぎても百合は来なかったんだ。

心配になった僕は、電話をかけてみた。
呼び出し音が数回鳴り、百合の声が聞こえてきた。


『百合?どこにいんの?』

『ごめんね、もうすぐ着くから!!』


電話の向こうでは焦る百合の声が聞こえてくる。
雑音でうまく聞き取れないが、百合の声だ。
その声にホッとする僕。



『早く来いよ?』


『ごめんね』


確かに聞いたんだ…

百合のそばに誰かがいたのを。
でも僕は怖かったんだ。

百合が離れてしまうと思ったから。


僕はこの事を隠した。


10分ぐらいたった後、百合が走って僕の方へ向かってきた。


『ごめんね!寝坊しちゃって』


乱れた髪の毛を手で直す百合。
顔がほんのり赤い。
暑いからかな?


『うん…大丈夫??』


『うん!!ごめんね?行こ?』


百合…本当の事言って。

怒らないから…


怒らないから本当の事を言って欲しかった…


百合は僕に嘘をついたんだ。

でもね、百合。

僕は百合を信じるよ。



水族館まで電車を使って一時間ぐらいかかる。

電車の中はとても涼しい。

隣には百合が楽しそうに話している。


『ねぇ水族館で何見る!?』

『ん~何でもいいよ』

『じゃあ百合が決めよー』



百合はとても嬉しそうだった。





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