この涙が枯れるまで



『今日はとっても楽しかった!!ありがとう。また行こうね』

電車の中でも百合は笑顔を絶やさない。


『おう、これから嫌というぐらい連れてってやるよ』

笑顔を見せる僕。
車窓からはもう夕日が見えなくなっていた。
夜が訪れる時間だと示している。


『約束ね』



『約束だよ…』


『じゃあね』




『またな』


僕達はキスをして別れた。
帰る時にはもう、心にあったモヤモヤが完全に消えていた。
何かすっきりした気分。

でもまた僕を不安へと堕ちていく出来事がおこったんだ。


僕は家へと向かう。


その帰り道会ったんだ。


滝川先輩に。


すれちがう瞬間、お互いガンを飛ばした。


すると滝川先輩が口を開いた。


『お前百合と付き合ってるんだって?』


落ち着いた口調で話す先輩。


『それが何か?』


『あいつ一途そうに見えて結構すごいから気を付けた方がいいぜ』


『俺は百合を信じてるんで。』


『信じてる? あのなぁ…人をあんまり信じない方がいいぞ』


『おかまいなく』


『まぁ頑張れよ。そのうち真実がわかっから』


こう言い残し、先輩は去って行った。


《そのうち真実が分かる》


この言葉に僕は不安へと堕ちていった。


またモヤモヤが僕の心を覆いつくす。


僕は帰ってからひとつひとつ整理した。


もしかしたら今日百合と電話をしたとき,近くに人の気配をした。


もしかしたらあれは滝川先輩かもしれない。


そして寝坊という嘘。



もし滝川先輩と会っていたなら,どうして百合は隠す必要があるんだろう…



百合は本当に僕の事が好きなんだろうか…



~♪


携帯がなる。


メールだ。


開くと、《百合》


百合からだ。



さっきまで不安だった気持ちがなくなってゆく。


これは百合だからかな。

百合と付き合って長いのにメールが来るだけで、こんなに嬉しくなる。


僕は百合の事が大好きなんだって思うんだ。






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