あひるの中の薔薇

目の前にいるかっこいいお兄さんが

笑顔で だけど声は厳しい感じで 言った





その言葉に あたしは動揺を隠せなかった





なんで………??



どうして………??





その言葉があたしの中をぐるぐる回っていた







「…あの…どうしてですか…??」




あたしは 泣き出しそうなのを我慢しながら

声をしぼりだして 言った






「どうしたもこうしたもないじゃん??

ありさちゃんが そういう顔してんだもん」






お兄さんは 笑顔で けどさっきとは違う

優しい声で言った










…………………恐い










何もかもこの人に 見透かされてるようで――









気がつけば あたしの目から

冷たいものが 音もなく流れていった






なんでかは分からないけれど

それは なかなか止まってくれなくて――――









ここでのあたしは 20歳なのに

お兄さんの前で 泣いたあたしは

16歳の子供に戻っていた








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