溺愛キング
ちょうど角を曲がるとたまり場が見えてきた。

廃墟の向かいにある駐車場ではいろんなやつがバイクなどをいじっている。

近付いていくと俺らに気付いたやつらが挨拶をしてきた。


「「「ちわーっす。」」」


作業を止め頭を下げる。


「やっほ――!!」


矢耶が手を振りながら面子に挨拶をした。

いつもちゃんと挨拶に応える。

そういう気さくなとこが人気の理由かもしれねぇな。

たいてい今までの歴代の総長の女はここまでしてない。
だから矢耶は面子から相当可愛がられてる。


「「「矢耶ちゃーん!」」」


ほらな。

族に入ってるとは思えねぇ声だ。

矢耶が来ただけで和やかな雰囲気に変わった。

あいつらの顔のニヤけぐわいがひどい。


「2・3日ぶりかなー?
あっ雅司〜」


バイクをいじっているやつの中の最前列にいた雅司に気付いた矢耶。

矢耶は俺がまだ幹部だった頃は、たまり場に連れて来ても中には入れず、外のやつらと一緒に居させてた。

だからか、下っ端のやつらと矢耶はすごく仲が良い。

しかも、たいていの名前を覚えているしな。

俺としては誇らしいことだが気持ち的には少し複雑だ。



矢耶は俺から離れて雅司のとこに行こうとした。


『おぃっ………矢耶っ』


繋いでた手が離された。

手を伸ばして矢耶の腕を掴もうとした―――……
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