月光御伽



望むもの。
私の欲しいもの。


『─ら…ぃ』


─聞こえない。はっきり言え。


そんな、優しく言うから
目の前が霞むじゃない。


『いらない。』


─…何故だ。


だって、いらないのよ。
地位も名誉も富だって、
あって何になるの?
あっても、私は、
たった独り。
独りぼっちなのに。


『そんなの、いらない。いらないから…傍にいて。』


私を独りにしないで。



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