新撰組~変えてやる!!

 「………寝て…る?」

 部屋に戻った葵は、布団の中で眠る山崎を見て呟いた。日頃からの疲れが一気に押し寄せたのだろう。葵は仕方なく日の当たる縁側に、柱に寄りかかるようにして座った。日差しがぽかぽかとしていて葵は、急に眠気におそわれた。葵は、コトンと柱に頭を預けてそのまま、意識を飛ばした。



 「ぁあ!!なんだってんだよっ!!俺が不器用だと!?俺は“器用貧乏”とは言われたことはあるが、不器用とはなんだ!」

 土方には、自分が不器用だという自覚がないようだ。あまりの機嫌の悪さに隊士達は土方の姿を見るなり、一応礼をしてから全力疾走で去っていく。

 「…ったく、なんでぇ…人を鬼みてぇに見るなり逃げるなんてよ…………ん?」

 土方は、視界の端に映った紺色の物体を調べるために、それへと近づいた。一歩近づくたびにそれが人であると確信する。いつもはきれいに纏めている髪が前に流れているため顔は確認出来ないが、紺色の着流しを着ているその人は、つい先程まで見ていたものと同じだった。

 「…小宮…?………寝てんのか?」

 問い掛けても、答えは返ってこない。その代わりに、微かな寝息が聞こえる。

 「…ったく……こんなとこで寝てんじゃねぇよ…まぁ、この組じゃぁ珍しいことでもねぇか。総司もよく寝ているしな…。」

 土方は自分が着ていた羽織を葵にかけ、それごと抱き抱えた。葵の体はいとも簡単に持ち上がった。

 「……っと…軽いな…こいつ、ちゃんと食べて…ないな……」

 土方は、今だけ自分の隊士からの扱いをありがたく思った。土方は誰にも会わないことを祈りながら、自室へと戻った。











 “……暖かい…………誰なの…?…私の手を、握っているのは……”

 「…葵………」

 「兄貴…、相変わらず心配性だな…医者だって言ってたろ?大丈夫だって…」

 “…この声…兄さん…?……榊兄さんの手か…あったかいな…元気そうで良かった…”

 「…わかってる。そろそろ帰るか…」

 「…そうだな。帰るか…お~い、葵~俺達は帰るからな~?また明日、来るぞ?」

 “…帰る?私、起きてる………あれ?目が開かない、手も、足も動かない!?…待って兄さん!!”


 
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