新撰組~変えてやる!!

 「まぁ…きれいな簪……これなら、どこに出しても恥ずかしくないわ。店主を呼んでくるわ。少し待っていて。」

 お露はそう言い残し、店の奥へと消えて行った。暫くして、お露が店の奥から店主と店員であろう女性を連れてきた。

 「お江、簪の品定めをお願いするよ。」

 「はい、あなた。」

 店主と思われる男性はお江<ノブ>と呼んだ女性に簪を見るように頼み、葵の目の前に座った。

 「奥様ですか?きれいな方ですね。」

 葵はお江をちらりと見て言った。

 「あぁ…わたしには勿体無いですわ。おっと、自己紹介が遅れました。わたし、汐吉<キヨキチ>と申します。いつも娘が仲良くして頂いて…」

 「もぅ、お父はん…そんなん言わんでええの。」

 汐吉の声を遮って、お露が茶を6つ持って来た。

 「お母はん、どない?私はええ話やて思たんやけど。」

 「せやね…私もいい話や、思うわ。あなた、この話、乗ってみぃへん?」

 汐吉はひとつ頷き、葵を見つめた。

 「交渉致しましょう。取り敢えず、この簪を買い取らせて頂けませんか?」

 「えっと…これを作ったのは俺ではなくあっちの2人なんです。ですから、話はあちらの2人にお願いします。」

 葵はお江と話している雫とお梅に視線を移した。

 「あの2人が…分かりました。」

 汐吉は雫に視線を向け、頷いた。

 「雫さん、お梅さん、俺は帰りますよ。今日は屯所の人手が足りませんので。ではまた来ますね、お露さん。」

 葵はニッと笑い、店を後にした。葵は真っ直ぐ屯所へと帰った。

 
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