新撰組~変えてやる!!
「…落ち着いたか?」
葵は山崎の優しい声に頷いた。山崎の着物の胸の辺りには、大きな染みができていた。
「……ありがと…もぅ、大丈夫だから。…はぁ…情けないな~…泣いたのなんて、母さんが死んだ時以来だよ…」
「そ~か…」
山崎はぽんぽんと子供をあやすように葵の背中を数回叩き、肩に回していた腕を下ろした。
「…そこにおる3人、心配するんはええけど、盗み聞きはアカンで。入ってきたらどないや?」
「ぇ…?」
山崎の言葉に、襖がガラッと開いた。そして入ってきた3人は予想とは全く違った。
「……局長、総長……副長まで…聞いてたんですか!?」
「………ぉぅ…」
葵は土方から返ってきた小さな返事に赤面した。
「別に盗み聞きしてた訳じゃねぇよ!!なんて言うか…その……入る頃合いを見失っちまって…」
「すみません、葵君…土方君の言う通り盗み聞きする気は全くなかったんです。」
土方は居心地悪そうにドカッとあぐらをかいて座り、山南と近藤は何故か正座をして座った。
「……もぅ、いいですよ…こちらこそ情けない所をお見せして、申し訳ございません。」
「で、用件は何です?出来れば、葵を休ませてやりたいんや。はよ、言うてください。」
土方は一度ムッと怒ったような表情をしてから口を開いた。
「…桝屋という店……なんだか怪しい。俺は、長州と繋がってるんじゃねぇかと思ってる。誰かを潜り込ませようと思ってんだが、誰がいいと思う?」
「桝屋!?…葵、どうなっとんねん…まさか知っとったんか!?」
山崎は驚いたように葵を見た。
「……まあ、ね………桝屋は副長の読み通り“黒”だよ。でも証拠、掴むまでは泳がせておくのがいいかもね…今は様子見程度の感じでいいんじゃないですか?こちらもまだまだ安定しているとは言い難い状態ですから。」