新撰組～変えてやる!!

•7 変化

　「…私の…せいだ……私が、歴史を変えたから……私が、殺した…私が…」

　「葵、少し落ち着けや。」

　山崎がうわごとのように自分を責めた立てる葵の手をギュッと握った。

　「……丞…？…私は、この時代にいちゃいけない人間なのかなぁ…」

　「何言うてんねんな…」

　山崎が覗き込んだ葵の涙で潤んだ瞳は、何も映していなかった。葵は山崎に顔を向けた。

　「…丞、殺して……今ならー」

　葵の言葉が最後まで紡がれることはなかった。その代わりに部屋にパンッと乾いた音が響いた。

　「ええ加減にせぇ!!殺せ、やと？…なら自分一人で死に!!一人で死ぬ勇気がないから人に頼るんか!?阿呆らしぃて笑えるわ。葵がそんなこと言う奴やとは、俺…今の今まで、知らんかったわ!!」

　頬を叩かれた衝撃で倒れた葵に山崎はまくし立てるように声を荒げた。

　「…丞に、分かるもんか……その人がいつ死ぬかわかってて、変えられないつらさなんて、分かるはずないよ…分からないから、そんなことが言えるんだ…。」

　葵は叩かれた左頬を抑えながら起き上がった。少しだけ冷静になった頭は、自分を責めるのではなく、他人を責めることを選択した。

　「あぁ、分からんわ。葵とは境遇が違うさかいな…けど、俺は他人に“自分を殺してくれ”なんてよぉ言わんわ。親がくれた命、粗末にするようなこと、俺はよぉせぇへんわ。」

　「うるさいっ!!自分の命、どう使おうと私の勝手でしょ!?」

　山崎の目はどこまでもまっすぐで、葵はその目にひどくイラついた。

　「…葵、知っとるか…？この時代、5歳になれる子供は、少ない。俺かて、医者の息子や。そんな子供ら、仰山見てきたわ。病で死ぬ人間も仰山見た。けどな、俺が見てきた人間は、誰一人、生きることを諦めへんかった。」

　「う、るさい…」

　葵は自分を否定されてるような感覚に耳を塞いだ。目も瞑れば何も見えず、聞こえない空間が広がる。葵の体が怒りと恐怖で震えた。

　「…ッ!?」

　葵はいきなりの感覚に息を詰めた。葵の耳にあてられていた手が暖かく大きい手によって剥がされた。