新撰組~変えてやる!!
「…葵…」
部屋から廊下に出た所で呼び止められ、葵はその声に振り向いた。
「あれ、丞…丞はどっち側だっけ?」
「どっちでもあらへん。俺ら監察方は誰が残ったんか見たりするんや。基本的にはみんな屋根裏におる。俺は屋根の上やけどな。」
山崎は左手に木刀を持ち、柱にもたれかかりながらそう言った。
「へぇ~…そうなんだ。」
「…明日…非番もらってんねん。見せてやりたいところ、あるから……………残りや…」
葵は山崎から放り投げられた木刀を片手でキャッチし、不敵な笑みを山崎に向けた。
「…俺を誰だと思ってるの?ちゃんと残るよ。」
「……期待してる。」
山崎はそれだけ言い残し、人間とは思えないジャンプ力で屋根の上に姿を消した。
「さてと、行きますか…」
葵は小さく呟き、バサッと小気味良い音をたてて隊服を纏った。あとに残ったのは涼やかな風と徐々に小さくなっていく足音だけだった。
「よし、いいか…2番隊は途中まで俺と行動。10番隊は副長と。3番隊と6番隊はバラバラになって他の隊の援護をお願いします。……いいですか、副長?」
「ああ、お前に任せる。」
葵はニッと永倉に笑いかけ、木刀を持ち立ち上がった。
「じゃ、行こうか…ぱっつぁん、準備はいい?」
「ああ。お前らもいいな!?」
永倉の声に少し小さめの“おう!!”という掛け声が上がった。
「………気を付けるんだぞ。練習で大怪我なんかしてみろ。即刻、降格させるからな。」
「もちろん、分かってますよ。…よし、行くよ!」
葵は屯所内へと足を踏み入れた。そして大きく息を吸い込んだ。
「新撰組だ。御用改めである!手向かう者は容赦なく斬り捨てよ!!」
永倉が葵の掛け声に“気合い入ってんなぁ…”と冗談めかして言った。葵のその一声で、2番隊の隊士が屯所内になだれ込んでいった。