新撰組~変えてやる!!

 「はい…俺、もう行きますね。失礼しました、土方副長。」

 葵は、土方に軽く頭を下げ、沖田の横を通り抜け、部屋を出ようとした。

 「あっ…小宮さん、夜に見回りがあるのですが、人数が足りないんですよ~…急なことで悪いですが、参加してもらえますかね…?」

 沖田は、ニコッと笑った。ただ、断れないような威圧感を醸し出していたが…。

 「……分かりました。参加します。」

 葵は少しだけ考えてから、答えた。沖田はニコニコとした笑顔のまま、“ありがとうございます、助かります。”と答えた。

 「では、失礼します。」

 葵は、そそくさとその場を去った。



 「どないしたんや、葵。なんや、顔色悪いで?なんかあったんか?」

 部屋の中には、着流し姿の山崎がいた。

 「いや……、体調は悪くない。少し気になることがあって…。」

 「なんや?話してみ?」

 葵は山崎の目の前に、腰を下ろした。

 「お梅さんのことなんだけど…、いったいどんな人なのかと思ってさ…。それがもとで殺されるなんて嫌なんだ。悪いけどさ、調べてくれないかな?」

 山崎は“殺される”という言葉に顔をしかめた。

 「葵……、もう…手遅れや…。もう、会津藩から暗殺命令が出とる。…何時かはまだ決まっとらんけど、遂に御上の怒りに触れてもぅたんや。」

 山崎は表情を曇らせながら話した。

 「そ…んな…。もう、下っていたのか?なぁ、烝。今日、何月何日なの?」

 「今日は9月10日や。」

 葵は顔をしかめた。3日後―9月13日は新見が切腹した日。つまり、芹沢一派静粛の日が刻一刻と迫っていたのだ。

 「未来、知ってて止められないなんて嫌だ。芹沢局長や新見副長が殺されていくのを、ただ見ているだけなんて出来ない。今なら、まだ間に合うかもしれない。俺、土方副長に掛け合ってくる。」

 葵は勢いよく立ち上がった。

 「無理や、葵!戻ってきぃ!!」

 葵は山崎が必死に止めるのを振り切り、土方の部屋へ向かい全速力で駆け出した。

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