新撰組~変えてやる!!
永倉は暫くの間、葵の顔をじっと見ていた。が、痺れを切らせたのか、葵の斜め前に、胡坐をかいて座った。それを見て、藤堂と原田も座った。
「……ごちそうさまでした。」
原田達は、目を見開いた。ただ、斉藤だけは無表情のままだったが…。
「もう、食べねぇのか!?」
「葵、体に悪いよ!」
「幾ら何でも、少な過ぎやで!」
「腹減って、死んじまうぞ!?」
葵が食べた量の少なさに、永倉、藤堂、山崎、原田は驚きのあまり大声で叫んだ。それもそのはず。葵は、ご飯に何度か手をつけただけだった。
「そ、そんなこと言われても…」
葵は、困ったように何も言わなかった斉藤をすがるような目で見た。
「…………葵、皆が心配している。…もう少し、食べておけ。」
「けど、一…これ以上食べたら、吐くかもしれない…気持ち悪い……」
葵は、口元を右手で押さえた。実際に葵の顔色は悪く、苦しげに寄せている眉間の皺からも、嘘をついているようには見えなかった。斉藤は葵の背中を数回さすった。原田達はその斉藤の行動に、石のように固まった。
「……斉藤が…」
「…嘘だろ…」
その斉藤の行動は、葵からしてみれば普通のことであったが、昔から斉藤を知っている者には、信じられないような行動だった。
「…まあ、無理をする必要はない。新見さんと出掛けるのだろう?早く、用意でもして来い。」
斉藤はそう言って、葵の背をトンと軽く叩いた。
「うん、そうする。」
葵はサッと立ち上がり、その場から去っていった。後から聞いた話だと、固まっていた原田達が葵の残したおかずを取り合いして、土方に怒られたとか…。けれど、本当のことかは、分からない。