新撰組~変えてやる!!

 「小宮君!!どこにいたんだ!!皆で捜していたのだよ!?」

 部屋に入ってくるなり、近藤は噛み付かんばかりの勢いで葵に詰め寄ってきた。その目には、涙を溜めて。葵は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。他人にここまで心配されたことがこれまで、あっただろうか?

 「ごめんなさい、御迷惑をお掛けしてしまって…」

 「迷惑?そんなことは思ってない。君はもう、新撰組の立派な一員だろう?新撰組は大きい家族みたいなものだ。家族の心配をするのは当たり前のことだ。そうだろう?」

 近藤は、ニカッと人当たりのいい笑みを浮かべた。

 「そうですよ。葵君、いつでも私達を頼っていいのですよ?」

 近藤の後にゆっくりと入ってきたのは山南だった。

 「…ありがとうございます。」

 葵は軽く微笑んでから、芹沢の残した手紙に目を移した。近藤と山南の視線も、手紙へと向けられる。葵は、それぞれの目の前に手紙を差し出した。それから、近藤には少し大きめの包み、山南には更に大きい包みを目の前に置いた。

 「芹沢局長の、最期の願いです。しっかりと受け取ってください。」

 2人は真剣な目をして頷き、その場で手紙を読み始めた。最初は真剣な表情の近藤だったが、読み進めるうちに再び泣き顔に変わっていった。山南も同じで、次第に驚愕の表情に変わった。

 「…負けたよ。……芹沢さんは、立派な武士だ。到底、かなわないな。」

 そう言って近藤は包みを開けた。中からは、芹沢が常日頃から持っていた鉄扇が出てきた。

 「本当に…」

 近藤に相槌を打つように口を開いてから、山南も包みを開けた。中からは木で出来た今とは少し違う形のあるものが出てきた。

 「…そろばん……?」

 「そうですね。」

 そう言って、山南は大事そうにそれを胸元にしまい込んだ。近藤も左の袖の中に鉄扇を入れた。

 「…芹沢さんの気持ち、確かに受け取った。ありがとう、小宮君!!」

 「ありがとう、葵君…」

 葵は、はにかむように笑った。


 
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